(1)Foxp3による制御性T細胞分化・機能・恒常性維持機構の解明:これまでに、Foxp3^<A384T>ノックインマウスにおいてFoxp3^+制御性T細胞(Treg)分化、in vitroにおける抑制機能は正常であるものの、末梢における恒常性維持に選択的な障害があることを見出した。マイクロアレイ解析の結果、末梢におけるFoxp3^<A384T> Tregの減少は、末梢組織に局在する活性化Tregサブセットの選択的欠損に起因することを見出した。そして、Foxp3^<WT> Tregを変異マウスに移入することでこのサブセットが再構築され、自己免疫疾患の発症が阻止された。以上の結果から、この組織局在性Tregサブセットの異常が自己免疫疾患の原因であることが明らかになった。 (2)Treg分化の可塑性:Foxp3^<EGFPCre>.ROSA^<RFP>ノックインマウスを用いたfate mapping解析、Foxp3^+およびFoxp3^-T細胞の養子移入実験を行い、Foxp3発現を失ってヘルパーT細胞へと"分化転換"する細胞の起源と本態について解析を進めた。その結果、胸腺及び末梢におけるTreg分化の過程でTCR刺激によって一過的にFoxp3発現する細胞が存在すること、そしてこれらがlymphopeniaあるいは炎症環境下でヘルパーT細胞へと分化することを明らかにした。一方、このような過渡的な時期を過ぎればFoxp3発現は安定化し、不可逆的にTregへと系列決定を受ける。そして、一過的なFoxp3発現と安定なFoxp3発現はFoxp3遺伝子座のクロマチン修飾によって区別されることを明らかにした。以上の結果は、Tregとは不可逆的に運命決定を受けた細胞系列であることを示すとともに、系列決定はFoxp3自体ではなく、Foxp3発現の安定性を規定する高次の機構により制御されていることを明らかにしている。
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