研究概要 |
1. マウス敗血症モデルの作製および生存率の検討:野生型マウスを用いて,cecal ligation and puncture(CLP)手術を施し腹膜炎誘発敗血症を惹起した.CLP手術後,12時間ごとに生存率を検討したところ,7日目までに約35%が死亡した. 2. 血液生化学検査:CLP手術後,経時的に血液を採取してALT, AST, BUN,およびクレアチニンを測定したところ,いずれもCLP手術6時間以降において著明に上昇しており,肝臓および腎臓が著明に障害されていることが判明した. 3. ケモカインのタンパク発現の検討:CLP手術後,経時的に採取した腹腔洗浄液を用いて,種々のケモカイン濃度をELISA法で測定したところ,CCL3,およびCX3CL1が著明に増加していることが判明した. 4. ケモカインレセプターの遺伝子発現の検討:CLP後増加が認められたケモカインに着目し,それらのレセプター(CCR1, CCR5,ならびにCX3CR1)発現について検討を加えた.CLP後経時的に採取した腹腔洗浄液より得られたcell pelletからRNAを抽出し,RT-PCR法により各ケモカインレセプターの遺伝子発現を検討したところ,いずれも著明に亢進していた. 5. 「1~4」の結果に基づき,CX3CR1, CCR1, CCR5, CCL3の各遺伝子欠損マウスならびに野生型マウスにCLPを施して生存率を検討したところ,野生型とCCR1欠損マウスでは7日目までに約35%が死亡したのに対し,CCR5欠損,CCL3欠損,CX3CR1欠損マウスでは約75%が死亡した,したがって,CCL3-CCR5およびCX3CL1-CX3CR1システムがCLP誘発敗血症において防御的な役割を担っていることが明らかとなった. 6. 法医実務への応用研究として,敗血症ならびに敗血症以外の剖検例の各種臓器を採取し,ケモカインレセプターの発現を検討した.免疫染色により,CCR2およびCX3CR1のタンパク発現を検討したところ,敗血症群の肺では,コントロール群と比べてCCR2およびCX3CR1発現が有意に亢進しており,また,その局在は主にマクロファージであることが判明した.したがって,CCR2およびCX3CR1は敗血症における分子法医診断基準になり得る可能性が示唆された.
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