研究概要 |
1.野生型マウスにcecal ligation puncture(CLP)手術を施し,経時的に採取した腹腔洗浄液を用いて種々のケモカイン濃度をBio-Plexサスペンションビーズアレイシステムにて測定したところ,CCL3が著明に増加していることが判明した. 2.CCL3に着目し,そのレセプター(CCR1およびCCR5)発現について検討を加えた.CLP後経時的に採取した腹腔内洗浄液より得られたcell pelletからRNAを抽出し,real time RT-PCR法により各ケモカインレセプターの遺伝子発現を検討したところ,いずれも著明に亢進していた. 3.CCL3,CCR1,CCR5の各遺伝子欠損ならびに野生型マウスにCLPを施して生存率を検討したところ,野生型とCCR1欠損マウスでは7日目までに約35%が死亡したのに対し,CCR5欠損およびCCL3欠損マウスでは約75%が死亡した. 4.CLP後経時的に血液を採取してALT,BUN,クレアチニンを測定したところ,いずれもCLP後24時間においてCCR5欠損およびCCL3欠損マウスで有意に高値を示した.また,腹腔内および血中の細菌数はCCR5欠損およびCCL3欠損マウスで有意に多く,菌のクリアランスが低下していた.したがって,CCL3-CCR5システムがCLP誘発敗血症において防御的な役割を担っていることが明らかとなった. 5.法医実務への応用研究として,敗血症ならびに敗血症以外の剖検例の各種臓器を採取し,ケモカインレセプターの発現を検討した-免疫染色によりCCR2およびCX3CR1のタンパク発現を検討したところ,敗血症群の肺ではコントロール群と比べて有意に発現が亢進しており,また,その局在は主にマクロファージであることが判明した.したがって,CCR2およびCX3CR1は敗血症における分子法医診断基準になり得る可能性が示唆された.
|