研究概要 |
申請者はこれまで、腫瘍血管新生因子VEGF遺伝子のエクソン1領域に、蛋白質をコードしないRNA(以下VEGFノンコーディングRNA)が内蔵されていること、このVEGFノンコーディングRNAが「癌促進性RNA」として機能することを明らかにしてきた。本研究では、VEGFノンコーディングRNAによる腫瘍細胞の悪性形質化の分子機構を解明することを目的とし、以下の研究成果を得た。 (1) VEGFノンコーディングRNA過剰発現細胞では、腫瘍抑制遺伝子p53およびSTAT 1の発現が抑制され、その結果、「p53抗腫瘍経路」および「インターフェロン腫瘍抑制経路」が阻害されていることを明らかにした。 (2) VEGFノンコーデイングRNA過剰発現細胞では、1)種々の癌幹細胞細胞表面マーカー(CD44, CD133, EpCAM)の有意な増加、2)種々の抗がん剤に対する強い耐性能の獲得、3)in vivoにおける高い造腫瘍能が認められた。 (3) VEGFノンコーディングRNAを標的とするsiRNAによって、癌細胞におけるp53およびSTAT 1の発現が回復し、抗がん剤に対する感受性が有意に亢進すること、さらにin vivoにおいて癌縮小効果があることを明らかにした。 以上の結果から、VEGF遺伝子領域には「腫瘍促進性のノンコーディングRNA」がコードされており、このノンコーディングRNAが、がん細胞の悪性形質化、さらには癌幹細胞化に重要な役割を果たしている可能性が考えられた。
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