研究課題
常染色体優性多発肝嚢胞(ADPLD)の疾患モデルでマウスであるSec63コンディショナルノックアウトマウスの解析を行った。Sec63^<lox/lox> : ksp-creマウスを様々な時期で観察し、嚢胞の発達、進行度を解析した。腎嚢胞は生後2週頃より主に腎髄質より形成され、徐々に増大し、腎重量体重比も大きくなっていった. しかし、生後1ヶ月を過ぎると嚢胞は増悪し続けるが、腎臓は萎縮して行き、嚢胞とともに腎臓のサイズが増大し続ける経過をとる表染色体優性多発嚢胞腎(ADPKD)とは異なった経過をとることが明らかとなった。ADPKDでは嚢胞形成及び増大の機序には細胞増殖が関与しているとされている。Sec63^<lox/lox> : ksp-creマウスでは、生後1ヶ月までは嚢胞上皮細胞にて細胞増殖が盛んであったが、以降はアポトーシスが盛んとなることにより腎臓が萎縮することが明らかとなり、これはADPKDの機序とは異なるものである。ADPKDの原因遺伝子であるPkd1、Pkd2はcilia関連遺伝子であり、ciliaの欠損、機能異常が嚢胞形成に重要であるとされている。Sec63はERタンパクである。Sec63^<lox/lox> : ksp-creマウスの嚢胞上皮のciliaは形態学的に異常ない事は確認した。ADPLDの嚢胞形成機序として、cilia関連蛋白の発現が低下しているだけでなく、更なる別の機序が関連している可能性があり、更なる解析を行っている。嚢胞以外の表現型として、水腎症の解析を行った。水腎症は胎生期では認められず、生後2週目頃からみられ、後天的であることが分かった。水腎症を認めたマウスの尿浸透圧は非常に低く、アクアポリン2、Na-KATPaseなどの発現が低下していており、この事が水腎症の原因となっている可能性があり、解析を進めている。
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Human Moleculer Genetics 17
ページ: 1505-1516