前年度の研究において、肥満に伴うARK5の白色脂肪組織における発現上昇をマウス・ヒトにおいて見いだした。そのため昨年度は、脂肪細胞特異的にdominant-negative ARK5 (dnARK5)を発現するマウスを作成し、予備実験を行った。本年度は、昨年度の予備実験から得た同マウスの高脂肪食摂食による肥満・糖尿病発症に対する抵抗性を個体数を増やすことで再確認した。この肥満に伴うARK5発現は、脂肪細胞の炎症性サイトカインの発現、特にIL-6の発現誘導に重要であり、ARK5は、いわゆる大腸癌発症に関わる重要なメカニズムであるWntシグナル、特にTcf (T cell factor) systemを稼働することでIL-6の発現誘導を行っていた。またARK5は、抗細胞死因子であるFLIPの発現を保護することで脂肪細胞の生存活性に関わる可能性を昨年度示したが、本年度の研究から、このFLIP自体が脂肪細胞の炎症性サイトカインや代謝ストレスによる細胞死耐性に重要であることを明らかにした。
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