関節リウマチ(Rheumatoid arthritis ; RA)は、自己免疫反応と滑膜細胞増殖との2つの側面を持つ。自己免疫疾患という観点ではこれまで広く研究がなされてきたが、滑膜細胞の増殖の機序は解明されていない。そこで、我々はこれまでRAの根治的治療を目標に掲げさまざまな視点から研究を展開し、世界で初めて滑膜細胞にちなんだ遺伝子のクローニングに成功しシノビオリンと命名した(HUGO GenBank ID : AB024690)。E3ユビキチンリガーゼであるシノビオリンはRA滑膜細胞に過剰発現し、RAの発症因子となる。またマウスでのシノビオリンの欠損はアポトーシスの亢進による胎生致死をもたらす。これらのことからシノビオリンの発現量は恒常性の維持に必須であり、その発現制御機構を解明することが重要である。シノビオリンの生理学的な発現はEts binding siteを介したGA binding proteinα/β複合体により制御されることをこれまでに明らかとした。しかしながらシノビオリンはRA滑膜細胞に過剰に発現しているため、RA滑膜細胞には生理学的な発現制御機構とは異なった病態特異的な機構が存在することが示唆される。そこでRA滑膜細胞における病態特異的なシノビオリンの発現制御を明らかにすることを目的としてEBS領域をプローブとしたゲルシフトアッセイを行った結果、RA滑膜細胞特異的な複合体が存在することが明らかとなったため、このRA滑膜細胞特異的にシノビオリンプロモーターに結合するタンパク質複合体の精製・同定を進めた。
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