我々は、関節リウマチ(RA)の原因を明らかとするために研究を進め、滑膜細胞にちなんだ遺伝子シノビオリンのクローニングに成功した。シノビオリンは、小胞体関連分解で機能するE3ユビキチンリガーゼで、RA滑膜細胞に過剰発現している分子である。また、シノビオリン遺伝子過剰発現マウスは関節炎を自然発症し、逆にシノビオリン遺伝子ヘテロ欠損マウスは関節炎の発症に抵抗性を示すことを示した。すなわちRA滑膜細胞に過剰発現したシノビオリンは、小胞体関連分解の機能を活性化させ、小胞体ストレス誘導性のアポトーシスを抑制し、滑膜細胞増殖を引き起こすことが考えられた。またその後の研究で、シノビオリンはがん抑制遺伝子であるp53を基質とし、p53依存的なアポトーシスを抑制することも明らかとなり、シノビオリンの広範にわたる抗アポトーシス作用がRAの病態形成を促していることが考えられた。このようにシノビオリンは、RAの発症に深く関与することが明らかとなったが、一方でシノビオリン遺伝子欠損マウスは肝臓でのアポトーシスの亢進により胎生期に致死となること、線維化形成にも深く関与することを明らかとした。すなわちシノビオリンは生理的・病態的ともに重要であり、その発現制御機構を解明することが必須となる。 そこで、RA滑膜細胞におけるシノビオリンの発現制御を明らかにすることを目的としてEBS領域をプローブとしてゲルシフトアッセイを行った結果、RA滑膜細胞特異的にこの領域に結合する複合体が存在することが明らかとなったため、このタンパク質複合体の精製・同定を進めた。その結果、interleukin enhancer binding factor 3(ILF-3)がこの複合体に含まれることが明らかとなった。さらにこの分子がシノビオリンの発現を制御することが考えられ、RAや広く線維症の病態形成論が明らかになることが示唆された。
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