研究課題
本年度は、全身投与型遺伝子ベクター開発に向けた、1.PAsp(DET)ポリカチオン構造への修飾、2.PEP-PAsp(DET)/PAsp(DET)ハイブリッドシステムについてそれぞれ検討を行った。1.PAsp(DET)ポリカチオン構造への修飾これまでにPAsp(DET)ポリカチオンは、非常に低毒性で生分解性機能を有し、高い遺伝子導入効率を達成できることを報告してきた。しかしながら、DNAやRNAなどのポリアニオンとの会合力が弱く、全身投与には不向きであるという欠点を有していた。そこで本年度は、PAsp(DET)の会合力の向上をねらい、ステアロイルやコレステロールなどの疎水性基をPAsp(DET)へと修飾した。当初の設計指針に基づき、pDNAやsiRNAとの会合力が向上し、著しく高い毒性を惹起することなく、高い遺伝子導入効率ならびに遺伝子抑制効率を示した。またマウス全身投与後の血中滞留性が向上し、治療遺伝子を搭載した担がんマウスの治療評価では、全身投与することで有意に高いがんの増殖抑制効果を示した。2.PEG-PAsp(DET)/PAsp(DET)ハイブリッドシステム高分子ミセル型遺伝子ベクターは、表層のPEGが生体成分との非特異的な相互作用を抑制し毒性の低下に寄与する一方で、遺伝子導入効率も低下させてしまうというジレンマを抱えていた。そこで、PEG-PAsp(DET)とPAsp(DET)を混合して作成したハイブリッドミセルについて検討した。最適な割合で混合したミセルについては、PEG-PAsp(DET)ミセルと同等の低毒性を維持しつつ、PAsp(DET)ポリプレックスと同レベルの高い遺伝子導入効率を示した。また、治療遺伝子を搭載したミセルの全身投与による担がんマウスの治療評価においては、PEG-PAsp(DET)ミセルならびにPAsp(DET)ポリプレックスでは不可能であった、有意に高いがんの増殖抑制効果を示すことを明らかにした。
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