研究概要 |
マウス胎児を用いた発現解析により、HIF2Aは前肥大軟骨細胞から肥大軟骨細胞にかけて強く発現することが示された。またマウス変形性関節症モデルやヒト手術サンプルを用いて検討したところ、HIF2Aは軟骨変性の初期から中期にかけて発現が増強することも示された。HIF2Aヘテロノックアウトマウスの骨格形成を詳細に検討したところ、生後1週頃まで一過性の成長障害がみられることが判明し、組織学的には肥大分化以降の過程が遅延していた。また変形性関節症モデルを作成して基礎検討したところ、野生型マウスと比して軟骨変性や骨棘形成が著しく抑制される傾向がみられることが判明した。HIF2Aの標的分子の探索においては、COL10, MMP13, VEGFの他、MMP3, MMP9, Runx2, IHH, PTH1RなどがHIF2Aの新たな下流分子として同定され、HIF2Aにより強力にプロモーターを活性化されたほか、HIF2Aヘテロノックアウトマウスでの発現も減少していることが分かった。さらにHIF2A自身を誘導するシグナル経路をHIF2Aのプロモーターを用いて探索したところ、NF-κBシグナルがRelAを介して強力にHIF2Aを誘導することが明らかとなった。RelAの核内蓄積は変形性関節症の進行とともに増強し、HIF2Aの発現増加と同調していた。以上より、HIF2Aは成長における軟骨内骨化の過程で広範な役割を果たす以外にも、変形性関節症の発症・進展においてもNF-κBシグナルの下流として多様な軟骨基質分解酵素を誘導するなど、非常に重要な役割を果たす可能性があると考えられる。
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