研究概要 |
神経障害性疼痛に重要な役割を有しているP2X4Rの活動刺激依存的に誘導される疼痛遺伝子を特定するため,cDNAマイクロアレイの結果から候補として選別された遺伝子の精査をreal-time RT-PCR法で行った。その結果,野生型マウスとP2X4R欠損マウス間で差異が認められた遺伝子として,同じATP受容体ファミリーであるP2Y12受容体(P2Y12R)を見出した。脊髄におけるP2Y12Rはミクログリア特異的に発現し,P2Y12R拮抗薬の脊髄くも膜下腔内繰り返し投与およびP2Y12R欠損マウスでは,神経障害性疼痛形成の有意な抑制が認められた。さらに,一端形成した疼痛に対してもP2Y12R拮抗薬は有意な抑制効果を示した。さらに,P2Y12RとP2X4Rとの相互作用について検討した。P2Y12の内因性リガンドであるADPを初代培養ミクログリア細胞へ処置することにより,P2X4R発現の著しい増加が観察され,この効果はP2Y12R拮抗薬の前処置で抑制された。興味深いことに,この発現増加はADP刺激後,短時間で認められることから,P2Y12Rを介した新しいP2X4Rタンパク質制御機構の存在が明らかとなった。一方,ミクログリアP2X4R-Tgマウスでの研究において,Tg作製のために使用するIba1プロモーターベクターでP2X4RのN末端部分にIba1のExon1およびExon2の一部が組み込まれてしまうことから,P2X4Rの機能に影響及ぼしてしまう可能性を回避するため,このExon部分を除去したIba1プロモーターベクターを新たに作製し,P2X4RcDNAを組み込み,Tgマウス創出のための新しいプラスミドベクターの作製を完了した。
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