研究課題
近年我々は、角膜上皮、実質、内皮細胞よりスフェアー法により老化した細胞を除去し、non-senescentな組織幹細胞を選択的に採取することに世界で初めて成功した。またスフェアー法により採取した角膜上幹細胞を用いた角膜上皮幹細胞シート、又は角膜内皮幹細胞塊を動物眼に移植することにより、角膜を透明にする治療に成功した。しかし、臨床的に角膜移植を必要とする患者は実質の混濁が生じている症例が大半を占めるため、角膜上皮や内皮のみならず、角膜実質の再生が必要となる。同様の方法により我々は、角膜実質より採取した組織幹細胞と人工実質を用いて、角膜実質を再生し、動物眼に移植することにより角膜透明性を維持することにも成功した。本研究では、角膜上皮・実質・内皮の各層より得られた幹細胞を用いて作成した各シートを組み合わせることにより、ドナー角膜に匹敵する幹細胞を用いた人工角膜を開発することを第一の目標とし、幹細胞主体の再生角膜を臨床応用することにより慢性的なドナー角膜不足を解消することを最終目的とする。昨年度までに我々は角膜上皮・実質・内皮の各層より組織細胞を選択的に採取し、採取した組織幹細胞を用いて、上皮、実質、内皮幹細胞シートを作成した。本年度は各幹細胞を動物眼に移植を行った。その結果、角膜上皮では移植後に通常の培養細胞を用いて移植を行ったものと比較して、細胞の更なる重層化に成功した。実質ではゼラチン素材と実質幹細胞を共培養することにより人工角膜実質を作成することに成功し、動物眼に移植することにより、通常の培養実質細胞を移植したものと比較して、細胞基質の産生能が高く、未分化マーカーネスチンなどの発現が高いことを証明した。内皮細胞を脱落させると角膜浮腫を起こすが、内皮組織幹細胞塊を移植することにより、角膜浮腫を抑制することに成功した。いずれのシートも、動物眼に移植した後は角膜透明性維持に働くことを証明できた。
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