癌において、細胞周期チェックポイントの異常や細胞分裂の異常は、分化や細胞増殖の異常の引き金になると考えられており、なかでも細胞分裂制御のキー分子として機能しているタンパク質の多くが、APC/C複合体により、ユビキチン分解されることが知られている。これらタンパクは、癌細胞でしばしば過剰発現していることから、APC/Cによる分解制御異常が、その過剰発現に関与するのではないかと考えた。我々は、APC/Cの活性を抑制するEmi1が癌細胞株や頭頸部癌症例で、高頻度に強い発現を示すことを見出した。また、Emi1の分解異常により、恒常的にEmi1を発現する癌細胞株を見つけ、その細胞がERK-RSK経路によるリン酸化により、Emi1のユビキチン分解が阻害されていることを見出した。今年度は、Emi1がERK-RSKにより、Ser310およびThr315がリン酸化されることを明らかにした。RSk2によるEmi1のリン酸化が、G2期でのタンパクの安定性に関わることをRSk2siRNAにより明らかにした。また、Ser310およびThr315をアラニンに変異させたリン酸化欠失変異体を作製し、そのタンパクの安定性を検討した結果、Emi1のSer310およびThr315のリン酸化は、G2期での安定性に関わることが証明された。 現在、Emi1におけるSer310およびThr315の恒常的なリン酸化が及ぼす癌化への影響とAPC/Cの基質タンパクの過剰発現をひきおこすかどうかを検討中である。
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