研究課題
生物は、生体内外の様々な化学的変化を敏感に感知し、様々な制御ネットワークをダイナミックに調節することでホメオスタシスを維持する。この糖代謝や、電解質、アミノ酸代謝などの制御システムの中心的役割を担う"起点"となるのが"化学物質センサー"である。近年、その一つである味覚受容体が、口腔の味細胞に発現するだけでなく、他の臓器にも発現していることが明らかになってきた。このことから味覚受容体は口腔のみならず、様々な臓器で、様々な機能をもつ"ポリバレント(多機能)ケモセンサー"である可能性が強く示唆された。本研究では、体内の味覚関連分子の発現分布を調べ、またこれらの遺伝子多型性(SNP)が肥満、糖尿病に関与するかどうかを明らかにすることを目的とする。本年度は、前年度までにゲノムデータ解析により肥満との関連が示唆され、また、うま味(アミノ酸)感受性の個人差の原因である可能性が示唆された、その受容体候補遺伝子T1R1/T1R3の2つのSNPsの影響をさらに詳細に調べるために、HEK293細胞強制発現系とCaイメージング法を組み合わせて機能解析を行った。この結果、T1R1のAla372がThrになると、うま味物質に対して高感受性の受容体を形成すること、一方、T1R3-Arg752がCysになると低感受性の受容体を形成することを明らかにした。また興味深いことに、これらのSNP頻度には人種差があり、肥満発症頻度が低い中国人や日本人などアジア人では、うま味高感受性のT1r1-372Thrの頻度が高いことがわかった(PLoS One,2009)。さらに近年、うま味受容体が消化管にも発現していることや、肥満の女性は、うま味感受性が低いという結果が報告された。以上のことより、味覚受容体のアミノ酸変異は、味覚だけでなく消化管などにおけるアミノ酸の感知に影響し、さらに肥満にも関与している可能性が強く示唆された。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (7件) 図書 (1件) 備考 (1件)
J Pharmacol Sci. 112(1)
ページ: 8-12
PLoS One. 4(8)
ページ: e6717
Ann N Y Acad Sci. 1170
ページ: 51-54
Am J Clin Nutr. 90(3)
ページ: 764S-769S
Proc Natl Acad Sci USA. 107(2)
ページ: 935-9
BMC Neurosci. 10
ページ: 152
ページ: 102-6
J physiol. 587
ページ: 4425-39
日本味と匂学会誌 16(3)
ページ: 287-90
ページ: 323-6
http://www.dent.kyushu-u.ac.jp/sosiki/a06/index.html