研究概要 |
細胞老化は発癌の危険性のあるさまざまなストレスに対して、異常細胞の増殖を阻止するために働く重要な癌抑制機構であることが明らかになってきた。しかし細胞老化の作用と機序ならびにその生体内での役割に関しては未だ不明な点が多い。そこで細胞老化のマーカーとしても知られているCDKインヒビターp16^<INK4a>遺伝子の発現パターンをリアルタイムに解析することがてきるp16^<INK4a>可視化マウスを作製し、皮膚化学発癌実験を行うことでp16^<INK4a>遺伝子の発現動態およびその誘導機構を解析した。その結果、ras遺伝子の変異によるp16^<INK4a>遺伝子の発現は、etsなどの転写因子の活性化とDNMT1によるヒストンメチル化のバランスによって制御されることを明らかにした(J.Cell Biol., 2009)。さらに、DNAメチル化酵素であるDNMT1がいかにしてヒストンのメチル化を制御しているのかという点に着目し解析を行った結果、DNMT1の発現レベルの低下が引き金となり、ヒストンメチル化に関わるいくつかの蛋白が細胞老化で特異的に分解されるという知見を得た。 また、温度感受性型SV40 large-T抗原により不死化させたヒト細胞株を用いたマイクロアレイ解析の結果から細胞老化の誘導や維持に関わる因子の候補を得たので、それらの遺伝子の発現解析や機能解析を行った。
|