研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き点連結度に関する要求を持つネットワーク設計問題について研究を行った.この問題に対しては従来,要素間連結度と呼ばれる連結度に対する要求などに点連結度要求を分割して解く手法がとられてきた.本研究ではこの手法をとらず,線形計画緩和問題を用いた反復丸め法を直接問題に適用することを試みた.過去にも同様の試みが他の研究者によってなされていたが,我々は点連結度要求を表現する集合対族に関して新たな性質を発見し,そのことを元にアルゴリズムの近似比に関して保証を得た.これは,反復丸め法を適用した先行研究で得られていた保証よりも格段に良い成果である. 反復丸め法は連結度要求だけではなく点の次数制約も備えた問題に対しても拡張できることが多い.本研究で得られたアルゴリズムも同様に点の次数制約も持つ問題へ拡張することができる.先行研究では,この点連結度要求と次数制約を持つ問題に対しては,次数の上限値と実際の次数の比についての保証として連結度の要求値に関して指数的に依存してしまうようなものしか得られていなかった.我々のアルゴリズムは多くの場合で次数制約の違反度が非常に小さく,いくつかの場合では次数の上限値と実際の次数の比が定数値になることが証明できる.また,要素間連結度についての要求と次数制約を持つ問題に対しても,良いアルゴリズムはこれまで知られていなかったが,我々のアルゴリズムはこの問題に対しても適用でき,新たな成果を得ることができた.
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