研究概要 |
安定マッチング問題は,同数(n)の男女と各人の異性に対する希望リストが与えられたときに,安定なマッチングを求める問題である.マッチングMにおいて,ペアになっていない男性mと女性wに対し,「mはMでの相手よりもwを好み,wはMでの相手よりもmを好む」の両方が成り立つとき,(m,w)をMのブロッキングペアという.ブロッキングペアを持たないマッチングが安定マッチングである. 希望リストに同順位を許し,かつリストが不完全で良い場合,最大サイズの安定マッチングを求める問題はNP困難であることが知られている.この問題に対しては,これまで近似度の上下限に対する数多くの研究がなされてきており,これまで最良の近似度は1.5であった.本研究では,片方の性のみに同順位が許された部分問題に対して,この近似度を25/17(〓1.47)に改良した.改良の度合は僅かであるが,この部分問題でさえ1.5の壁を破れるか否かは大きな未解決問題であったので,本結果はインパクトを与える貢献となった. 改良にあたっては,以下のアイデアを用いた.既存の1.5-近似アルゴリズムは,プロポーズ型のアルゴリズムであり,あるルールに従って女性側がプロポーズしてきた男性の採否を決定する.本研究では,問題を整数計画問題として定式化し,その線形緩和問題の最適解をプロポーズ型アルゴリズム上での女性の選択のヒントとして利用することにより,改息を達成した.
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