研究概要 |
本研究は、インターネット観測に向けた最適化問題のモデル化と効率的算法の提案を目的とし、平成20年度においては、まずインターネットにおけるリンクの観測問題を定式化し、一般に観測装置(ビーコンという)の最小化問題がNP困難であることを示した。さらに、応用を考え、近似的にビーコン集合を計算するための線形時間アルゴリズムを与え、ノード数が1億の場合でも高速に高品質な解を計算できることを示した。このアルゴリズムを用いて複数の実ネットワーク(ノード数が数千〜数十万)や近似モデルのネットワーク(ノード数が数十万〜1億)に対して検証実験を行った結果、必要なビーコン数と観測のために用いられるプロトコル間の関係が分かった。具体的に、一個のビーコンの観測範囲がその半径Lによって定められるが、Lが大きければ当然ビーコン一個の観測範囲も広くなるので、必要なビーコン数が減るわけだが、攻撃者に乗っ取られて悪用される心配もあるため、セキュリティ上、小さいLのほうが望ましい。実際インターネットにおいては、観測用のプロトコルとしてソースルーティングが提案されたものの、Lに関して特に制限を設けないし、観測範囲とセキュリティのトレードオフ関係も明らかではなかったし、実用に至っていない。本研究は、提案手法によって、L=4, 5あたりが妥当かとの結論を得て、Lに関して制限をつけた新しい観測用プロトコルを提案し、国際会議11th IEEE International Conference on Communication Systems 2008などで発表を行った。
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