本研究は、インターネットにおけるリンクの観測問題を考え、そのための数理モデル化とアルゴリズムの開発や応用を目的としている。前年度までは観測点のためにL-ビーコン(Lは0以上の整数で、ビーコンの観測できる範囲の大きさを示すパラメータである。)という概念を提案し、観測問題を最適化なL-ビーコンの配置を求める問題に定式し、そのための高速アルゴリズムSieve法、及びL-ビーコン配置問題の双対問題に対する双対アルゴリズムDualSieve法を開発した。1億節点を持つ大規模なインターネットグラフに対しても30分程度で解くことができる。さらに多重観測やビーコンの負荷平準化できるようアルゴリズムを拡張し、Lの値と観測の多重度とビーコン数間の関係を示した。H22年度では、前述のビーコン配置問題の一般化として、各リンクに転送時間を表す長さ、各ノードに観測範囲がそれぞれ与えられたときに最適なビーコン配置を求める問題を考え、Sieve法とDualSieve法の拡張に対して、インターネットを代表とする複雑ネットワークや道路ネットワーク等様々なネットワークを用いてシミュレーション実験を行い、提案アルゴリズムSieve及びDualSieveの汎用性と有効性を確認した。またSieve法の応用として、筆者らによって提案された高速な最短路計算アルゴリズムにおけるランドマークの計算に適用し、良好の効果が得られることを示した。最後に、これまでの実験データを整理し、研究成果をまとめて雑誌に投稿することを準備している。
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