研究概要 |
実用上重要な組合せ最適化問題の多くは,NP困難と呼ばれる計算困難なクラスに属している.これらの問題に対する既知の厳密アルゴリズムは,全て指数時間アルゴリズムであり,実用上の観点からは使用に耐えないことが多かった.しかし,近年の計算機の高速化とアルゴリズム設計における理論の発展により,厳密アルゴリズムが適用可能な場合が増えており,より高速な厳密アルゴリズムの設計が要請されている.本研究では,計算困難な最適化問題の代表として,論理式の充足可能性問題とグラフの彩色可能性問題を取り上げ,高速なアルゴリズムの設計と解析,および高速化の限界に関する研究を行う. 以下,代表的な結果である3-SATの最悪計算時間改良を例に成果を述べる.論理式の充足可能性問題(SAT)とは,与えられた和積標準形の論理式を充足する変数割り当てが存在するかどうかを判定する問題である.SATは最初にNP完全性が示された問題であり,厳密アルゴリズム研究における最重要テーマのひとつである.本研究では3-SATに対する1.3211^n時間の乱択アルゴリズムを与えた.これはRolfによる現在最速のアルゴリズムの計算時間1.32216^nを更新する結果である.
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