研究概要 |
研究代表者は平成21年度に構文的な属性文法である属性カップリング(Attribute coupling, AC)とそれらを合成する手法であるdescriptional compositionの圏論的定式化を得た。この定式化を、より広いクラスのACの合成を扱えるよう拡張したのが平成22年度の主な研究内容である。特に、GanzingerとGiegerichらがACの合成を発表して以来、quasi-SSUR AC(属性の利用を「正確に一回」から「たかだか一回」にゆるめたもの)や、スタックつきAC(属性値としてスタックを許すもの)といった拡張されたACの合成の理論が提案されており、それらを統一的に説明する圏論的枠組みを構築することを目指した。 このゴールを達成するのに重要なのは、拡張されたACの合成の理論が依拠している原理を見抜くことにある。研究代表者はその原理が「双方向化可能な構造で拡張されたACは合成が可能」であるという仮説を立て、この仮説を「トレース付きモノイダル圏に付加された構造がInt構成で保たれる」と定式化した。この定式化に基づき前年度の圏論的枠組みを拡張した結果、先行研究で提案されたACの拡張とそれらの合成を統一的に導くことができた。 この研究の一番の貢献は、拡張されたACの合成が依拠している共通の原理を明らかにし、それらの合成の手法を統一的に説明したという点にある。そして、この成果はACの合成とそこから派生するプログラム変換を拡張する際の指針を与える、示唆に富むものである。
|