研究概要 |
量子理論を用いたセキュリティ基盤研究として主にコヒーレント光通信の通信路容量の研究を行った.コヒーレント光通信はファイバーを利用した近距離通信から,衛星を利用した惑星間通信までの幅広い応用が期待でき,さらには量子理論による特性により,使用機器や条件によっては古典通信の限界を超える通信路容量が期待できる.そこでコヒーレント光通信の通信路容量について,光ファイバーおよび惑星間通信を想定したパラメータを与え,古典理論によるコヒーレント光通信の容量の限界や,量子論により実現できる容量の限界について評価を行った.具体的には光ファイバーを使用した通信について,silicaファイバーにおいて最大の帯域幅である50THzを使用できると仮定し,通信距離を約100km,コヒーレント光の生成レートを毎秒125Gパルスと仮定した場合にPhase Shift keying(PSK)とQuadrature Amplitude Modulation(QAM)の各方式で変調を行った場合について評価を行った.結果として光ファイバーの融解が起きかねない10Wの入力電力に対し,量子効果を利用したとしても,1ペタbit/secが限界であることを示すことができた.惑星間通信については帯域幅を1THzとし,送信用アンテナの直径を305mm,受信用アンテナの直径を10000mmとしたときに1Wの入力電力で地球-火星間の通信を実現したと仮定すると,10Gbit/secを実現することが可能であることを示した.これらの結果はコヒーレント通信を使用した暗号通信などへの評価に応用できるものと期待できる.
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