ソフトウェア開発の工数および開発期間の予測において影響を与える要因の一つであるソフトウェア品質に着目し、欠陥データの測定方法と、これを用いた品質予測モデルに関する研究を行った。測定方法については、既存の国際規格や技術標準において欠陥の測定方法が十分な精度で定義されていないこと、およびこれに言及する先行研究がないことに着目し、ソフトウェア開発ライフサイクルにおける欠陥測定の一貫性を保つことを目的とした測定方法を提案した。この方法の妥当性を議論するとともに、アンケート調査に基づいて測定方法のバラツキが組織によってどの程度存在するのかを提示した。ここで提示した欠陥測定方法はさまざまな機会で広く産業界に提示しており、一定の賛同が得られている。 また、欠陥データをワイブル分布の一種であるレイリーモデルに適用するにあたって、(1)連続型変数を前提としているレイリーモデルに対して離散的かつ等間隔ではなく測定された欠陥データを適用する方法、(2)欠陥予測数に近い摘出済み欠陥数が得られているときの欠陥数の区間予測において条件付き確率の考え方を適用する方法、(3)計数データである欠陥データに対して一般化線型モデルを適用することの妥当性、の3点について実データの分析に基づいて学会発表を行った。 ソフトウェア品質リスクは、ソフトウェア開発工数の予測モデルを検討するにあたって無視できない大きなリスク要因である。その根本となる測定方法と欠陥数予測モデルに関する成果を、工数予測モデルに結びつけることが今後の課題である。
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