XMLの融合変換のほか、descendantの計算パターンに類似した計算パターンを記述できるグラフ上のstructural recursionの融合変換について適用可能性を考究した。XML変換の場合と同様、グラフ変換でも再帰が直接連続しているものばかりではなく、再帰と再帰の間に選択などの変換が挿入されているため直接融合変換が適用できないような合成変換も多いことが分かったが、不要な再帰を静的に検出、除去したり、挿入されている変換を外に出したりする補助変換を開発することにより、多くの例で融合変換に持ち込むことが出来るようになった。このような最適化を成果の一部として含む論文をプログラミング言語の主要な国際会議で発表した。 グラフのstructural recursionの融合変換の一般形の意味するところは中間データが除去されるかわりに入力がより複雑な本体で何度も走査されることであるが、その本体を、再帰パターンの静的解析により劇的に簡略化する機会があることが分かり、実装も含めてプログラミング言語分野の国際会議に投稿した。 クラス図から関係図へのマッピング、プラットフォーム独立モデルからプラットフォーム依存モデルへの変換など様々なモデル変換のカスケーディングに対して融合変換を適用して評価した結果、再帰パターンが絞込みを伴う場合は融合変換によりこの絞込み効果が得られなくなり、再帰パターンの間に不要な結果の除去を実行時に行う最適化を阻害することも明らかになった。これも本研究課題の目標のひとつである適用限界のひとつと言える。 このような融合変換の他の実行時最適化との効果的な棲み分けも今後の課題である。
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