研究概要 |
本研究では, ナノテクノロジの1つとして知られるDNA自己組織化技術により, 1チップ内に実装される大規模集積ナノシステムに対し, システム内に発生する欠陥や故障に対処するためのディペンダビリティの向上技術を明らかにする. 本年度は, システムの製造過程で発生する欠陥プロセッサの隔離手法として, パケット転送により正常なプロセッサを獲得する手法を開発した. DNA自己組織化では欠陥がクラスタ状に密集して発生することが知られているため, その特性を考慮したクラスタ欠陥モデルを考案した. このモデルの下で, 約100万プロセッサ規模の大規模ナノシステムに対して, 提案手法を適用した場合の正常プロセッサの獲得率, 最大プロセッサ間距離, 隔離時間の評価を行った. これにより, 従来手法と比較して, 同程度の獲得率を実現しながら, 隔離時間が極めて短く, しかも, システム内のプロセッサ数に対してほぼ一定である, また, 最大プロセッサ間距離が約50%短縮可能であるという良好な結果を得た. さらに, プロセッサ間を接続するスイッチネットワークにも注目し, 多数のプロセッサを接続するための大規模スイッチの構成を検討した. 小規模スイッチを複数個用いて大規模スイッチを構成する方式により, 同程度のスイッチ性能を実現する場合に, ハードウエアコストが少なく抑えられ, 欠陥や故障の耐性に優れたスイッチを構成可能であるという結果を得た. 現在, システム内に冗長要素を導入した場合の性能を評価, 検討中である. 今後は, 現在の検討をさらに進め, ディペンダビリティを向上させる手法を解明するとともに, チップ自身が自律的に欠陥隔離を行うための組込み回路の設計に着手する予定である.
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