研究概要 |
本研究では,ナノテクノロジの1つとして知られるDNA自己組織化技術を用いて1チップ内に実装される大規模集積ナノシステムに対して,システム内に発生する欠陥や故障に対処するためのディペンダビリティの向上技術を明らかにする.本年度は,欠陥隔離と冗長化の2種類の耐欠陥アプローチを組み合わせたディペンダブルなシステムネットワークの構成方式を研究し,欠陥隔離を自律的に行うためのオンチップ組込み回路の設計を行った.本システムネットワーク構成法では,前年度に開発した欠陥プロセッサの隔離手法に,冗長化手法の一つであるn-out-of-k手法および欠陥プロセッサのバイパス機能を追加することにより,これまで未解決であったクラスタ欠陥により多数の使用可能プロセッサがネットワークに接続できない問題を解決し,より多くのプロセッサを接続したネットワークを短時間で構成することを可能とした.また,システムネットワークの自律的構成の可能性を示すために,欠陥隔離機能を持つオンチップ組込みルータ回路の設計を行った.大規模なシステムにも適用可能にするため,局所的な情報のみを用いて,各ルータが並列分散的に動作する回路を設計した.回路面積を少なく抑える必要性から,制御の際に仮想チャネルを用いないルーティング法を開発した.ハードウェア記述言語により回路設計を行い,評価を行った結果,少ない面積オーバヘッドで高速なルーティング制御が可能であることを明らかにした. 今後は,本手法で構成可能な大規模ディペンダブルナノシステムの特性を考慮した新たなシステムアーキテクチャおよびアプリケーションを解明し,大規模ナノシステムの実用化に向けて研究を進める予定である.
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