研究概要 |
区分多項式近似に基づく多変数数学関数回路の自動合成システムの開発を目的とし,平成20年度は,システムのプロトタイプを開発するために,以下の研究を行った. 1. 多次元空間の分割アルゴリズムの考案 : 区分多項式近似に基づく数値計算回路のサイズや性能は, 定義域 (多次元空間) の分割法の効率で決まるため, 高速かつコンパクトな数値計算回路を設計するために, 本研究では, まず, 効率的な空間分割アルゴリズムについて研究を行った. そして, コンピュータグラフィックスなどの様々な文献を参考に, 再帰的空間分割アルゴリズムを考案した. 様々な二変数数学関数を用いた多数の計算機実験により, 本提案アルゴリズムを用いることで, 高速かつコンパクトな多変数数学関数回路を容易に生成できることが確認できた. 2. 多変数数学関数回路の回路構成の考案 : 次に, 提案アルゴリズムで得られた定義域の分割を, 高速かつコンパクトに実現する書換え可能な回路構成について研究を行った. 様々な回路構成を試行錯誤し, 最終的に, EVBDD (Edge-Valued Binary Decision Diagram) という決定グラフを用いた回路構成が優れているという結論に達した. また, 提案アルゴリズムでは,任意の近似多項式を用いることができ, 二変数数学関数回路の設計には, 接平面多項式とバイリニア補間多項式が効果的であることを, 回路のFPGA実装により実証した. 本年度の研究では, 以上のように, 空間分割アルゴリズムとそれを実現する回路の考案に成功し, 二変数数学関数回路のプロトタイプ自動合成システムの開発に成功した.
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