研究概要 |
昨年度(平成20年度)に開発した自動合成システムに拡張を加えることを研究の目的とし,平成21年度は,以下の研究を行った. 1. 多変数離散関数(多次元データ)への応用:世の中の様々な物理現象は,数学関数として定義されておらず,測定値や実験データ(二次元データ)などの2変数離散関数として与えられる場合が多い.そのような離散関数から数値計算回路を自動合成するために,本研究では,2変数スプライン補間関数とバイリニア補間関数を用いて与えられた離散関数を近似し,数値計算回路を自動合成した.スプライン補間関数とバイリニア補間関数の両方をうまく組み合わせることで,高い計算精度と速度の両方を満たす数値計算回路の自動合成に成功し,山岳の標高データなどを用いた実験により,本数値計算回路は,ソフトウェア実装に対し,約129倍から176倍の性能が得られることを確認した.提案した数値計算回路は,大量データの計算に特に優れており,1秒間に計算できるデータ量は,ソフトウェアで計算できるデータ量の約531倍から704倍におよぶことを確認した. 2. 浮動小数点回路への拡張:次に,固定小数点回路から浮動小数点回路への拡張に関する研究を行った.様々な回路構成を試行錯誤し,最終的に,単調関数においては,EVMDD(Edge-Valued Multiple-valued Decision Diagram)という決定グラフを用いた回路構成が優れているという結論に達した.また,本研究では,提案した回路構成を数学的に解析し,その複雑さを明らかにした.そして,回路のFPGA実装により提案回路のコンパクトさを実証した.提案手法は,従来利用されていた多項式近似ではなく,決定グラフを用いているため,高精度とコンパクトさの両立に成功した.
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