研究概要 |
科学技術計算として,メモリバンド幅に比べ膨大な演算性能を必要とする計算機合成ホログラム(CGH)と,メモリアクセスがボトルネックとなる電磁界シミュレーション手法(FDTD法)を主に扱った.CGHとは,仮想的な3次元物体の座標データを用いてコンピュータで光の干渉を計算し,ホログラムを作製する方法である.作られたホログラムを液晶ディスプレイに表示し,光を当てることにより立体像を再生することがきる究極の3次元ディスプレイ技術である.昨年度において,NVIDIA Geforce 280を搭載したGPUクラスタの構築を行った.また,シングルGPUによるCGH及びFDTD法のプログラムを開発し,計算高速化について検討した.CGHでは,液晶ディスプレイの解像度が1,920×1,020の場合,1つのGPUで1000点以下の3次元物体においてリアルタイムでホログラムを作製し,液晶ディスプレイに表示することが可能となり,十分な計算高速化を実現した.一方,FDTD法では計算領域が大きくなると計算速度が低下する問題が生じた.このような事例は研究されていないため,本年度においても引き続き研究を行った.その結果,計算領域の大きさに依存せず,実測メモリバンド幅から導出したGPUのピーク性能に対して約8割の性能を引き出すことに成功した.また,本年度において,CGHのGPU用並列化コードを開発し,GPUクラスタに実装した.CGHはノード問の通信量が少なく,計算結果はCPUを介さず,直接,ディスプレイに出力すれば良いため,GPUクラスタ向きの計算といえる.GPUクラスタによる計算高速化について検討した結果,ノード数を8ノードまで増やしても顕著な計算速度の低下はなく,十分な計算高速化を実現することができた.本研究によりIEEEおよびACESの国際会議において招待講演を依頼された.
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