無線チャネルの利用状況をMAC層から得られる情報から推定し、クロスレイヤ制御により、上位層にこの情報を伝える。上位層では、無線の状況に合わせてトラヒックを調節できる適応制御が可能となる。この制御により、動画の通信では、端末が利用できる帯域幅に合わせた動画転送制御により、ネットワークの輻輳によって品質の劣化しない動画通信を目的とした。TCP通信では、動画通信を邪魔しないTCP通信のバックグラウンド転送の実現を目的とした。端末側、および、基地局側でトラヒック制御する方式の開発し、FPGAを用いた無線LANボードに実装したテストベッド、および、コンピュータシミュレーションによる評価を行った。 無線LAN評価ボードを改造し、無線の利用状況をNAV(Network Allocation Vector)測定することで、推定できるようにした。無線LANボードの情報を解析し、上位層に伝えるためのクロスレイヤ制御プログラムをLINUX上に実装した。クロスレイヤプログラムは、トラヒック生成アプリケーションに対して、自端末で獲得できる帯域を伝えることで、アプリケーションで生成するトラヒック量を調節する適応制御方式を開発した。 さらに空いている帯域に合わせてTCPトラヒックをバックグラウンド転送することにより、動画通信を邪魔しない方式の開発をした。提案方式では無線の空き帯域幅に合わせて、端末からの上り方向に対してはTCPの輻輳ウインドウを制御し、下り方向に対してはTCPの広告ウインドウを制御することで、生成するトラヒックの制御をおこなった。RTTをもちいた制御が難しいため、輻輳/広告ウインドウの制御はAIMDを用いて行った。
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