研究概要 |
伝送レートと送信電力を適応的に変化させた場合のアドホックネットワークの検討は十分には行われていない。そこで、本年度は伝送レートと送信電力を個別に変化させた場合、アドホックネットワークの特性がどの程度改善するのかについて検討を行った。 伝送レートを適応的に変化させる検討では、アドホックネットワーク用の経路制御プロトコルであるAODV(Ad-hoc On-demand Distance Vector)とOLSR(Optimized Link State Routing)を採用した場合について特性改善度合いを明らかにした。結果より、適応的に伝送レートを選択することで、各端末が無線チャネルを利用する時間が短縮される。そのため、各端末の送信機会が増えることにより、端末間のスループットだけではなく、アドホックネットワーク全体のスループットも改善可能であることを明らかにした。さらに、通信時に経路構築を行うAODVの場合、伝送レートが適応的に選択されることと端末の送信機会が増えたことにより、経路損失が発生する可能性を大きく下げることが可能であることも明らかにした。 次に、送信電力を適応的に変化させる検討では、事前に経路構築を行うOLSRを改良することにより、近隣に存在する各端末に対して、伝送路状態とパケット長に基づいた送信電力を選択する手法を提案した。本手法では、OLSRが作成する経路トポロジに大きく関与する、MPR(Multi Point Relay)端末の選抜でも送信電力を考慮することにより、送信電力削減による干渉量の削減だけではなく、経路トポロジの見直しによるホップ数削減によりパケット送信数の削減を行っている。 これらの研究成果は国内学会で一部発表済みであるとともに、7月にアメリカで開催される国際会議(6th International Conference on Cybernetics and Information Technologies, Systems and Applications : CITSA 2009)で発表することが決定している。
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