本年度の研究目的として、1. プロテクション方式SBRのノード故障への対応と、2. SBRが計算した迂回経路を用いたTCP通信を考慮した動的な負荷分散手法の確立の2点を挙げていた。 1. に関しては、SBRをノード故障に対応させるために、迂回路の一部として途中に最短路を用いることでノード故障にも対応できるようなノードプロテクション方式SBR-NPを考案し、この迂回路を用いるための第二の経路表の計算アルゴリズムを示した。本手法はリンク故障に対応する従来のSBRと同様、第二の経路表とパケットヘッダへの2ビットの付加という低いオーバーヘッドによりノード故障に対応することができる。また、迂回路が存在する限り、任意のノード間で、送信元ノードの次ノードを通らない迂回路を設定できる能力を持つ。2. に関しては、まずは昨年度に取り組んでいた、UDP通信を対象とした負荷分散手法に関する評価を進めた。具体的には、実ネットワークのトポロジと人工トポロジの両方を用いて、ボトルネックリンクが存在する場合の負荷分散性能についネットワークシミュレータns-2を用いたシミュレーション実験を行い、提案手法の有用性の評価を行った。さらに、パケットが複数回迂回することができるように提案手法を拡張し、負荷分散性能の向上を確認した。一方で、TCP通信は迂回させると到着順の乱れにより性能が落ちることから、TCP通信を許容するためには、TCPパケットを迂回させず、UDP通信のみを迂回させることにより、TCPとUDPの両方の通信性能を向上することが望ましい。そこで、提案手法を改変し、UDP通信を迂回させつつTCP通信を優先的に最短路に流入させることで、UDP通信を迂回させることでTCP通信のスループットを向上することに成功した。
|