研究概要 |
本年度は,1. 対面コミュニケーションの際に利用者端末で構成されるネットワーク,すなわち無線可視領域ネットワークを対象に,利用者の相対位置情報をアプリケーションから容易に利用できる名前解決ミドルウェアの実現法を示した.このミドルウェアにより,位置情報を利用したアプリケーションの開発が容易になることに加えて,位置情報を管理するサーバや利用場所固有の事前準備が不要という利点が得られる.2. このネットワークが無線通信を用いることから,秘匿通信のための端末相互認証手法を提案した.この認証手法は,公開鍵基盤に依存しないことと,利用者自身が相互認証の成否を判断することが特徴である.利用者が対面しているため,利用者自身が低ビットレートの通信媒体の役割を担い,両端末に表示された内容の一致を確認する.利用者が確認する内容を表形式とした確認方式を用いることで,従来よりも短い時間で一致が確認できることを実験で示した.利用者自身が認証する端末を直接確認する本方式は,誤った相手ヘファイル等を送信する事故を防ぐ手立てとしても有効と考える.3. 対面コミュニケーション支援の効果を高めるために,すれ違いざまの会話や会議室での打ち合わせといった利用者の行動を認識する方法を検討した.具体的には,装着可能な加速度センサを用いて(1) 動作のペースが異なる場合にも同一の動作と認識するための手法と(2) 歩きながら携帯電話を操作するといった「ながら」行動の認識手法を検討した.いずれの認識手法でも,動的計画法の一種であるDTW (Dynamic Time Warping)法を用い,加速度データにDTW法を適用する際の課題として,距離関数の検討と加速度センサから得られる多次元データの効果的な処理方法を検討した.これらの検討結果を踏まえ,引き続き対面コミュニケーション支援システムの有効性を高める研究を継続する.
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