3DCGソフトウェアや3DCADソフトウェアの進歩と普及により、コンピュータを用いた形状設計が容易になったことで、数多くの3D形状データが作り出されている。3DCGソフトウェアで作られる形状の多くは、ディスプレイに表示することを主な目的としている。これをものづくりに活用できれば、既存の資産の有効活用を図ることができると考えられる。しかしながら、3DCGソフトウェアで作りだされた形は、そのままでは実世界のものづくりに使用できない場合が多い。たとえば、構成部品が互いに干渉するなどの幾何的な問題や、表面が閉じていないなどの位相的な問題が含まれる。 そこで、実物体の設計および制作に必要となる制約条件を勘案した3D形状データの幾何形状処理に必要となるデータ要素およびデータ構造の研究開発を行う。また、既存の各種3D形状データのフォーマットの調査を行い、横断的な変換のアルゴリズムを実装することで、実物体の制作を実現するシステムの実現を行う。 研究開発に取り組むための前準備としてGoogle Earthや3D形状検索技術のベンチマーク用データなどから3D形状データの収集を行い、それらを本研究で扱う内部フォーマットへ変換することを行う。それに先立って、本研究で用いる内部フォーマット用のデータ構造についての検討を行う。サーフェスモデル表現として一般的に普及しているHalfEdge構造をベースとすることを想定するが、位相情報を含まない単なる三角形の集合から3面稜線を含む非多様体までを統一的に扱うための、より柔軟なデータ構造が必要になる。 また、本研究に近いテーマであるメッシュ簡略化手法に関する研究について、過去の研究に関する文献調査を行い、それぞれの実装上の問題点について評価を行う。過去の研究では、単純に面の数を減らすことを目的とし、形状の対象を球と同相のものに限定するなどの制約が多いため、それらの制約を回避するための検討を行う。 研究開始後の初年度およびその次年度は、3D形状を構成する点・頂点・面からなる幾何要素を、必要に応じて簡略化、修正し、実在するものとして妥当な位相を持つような位相操作に関する研究を行う。対象物によって、許容される位相および幾何情報に違いが生じるため、それらを考慮したアルゴリズムの考案を行う。 最終目標とするものづくりへの活用については、対象とする素材の絞込みを行い、それぞれの素材ごとに固有の特性による問題点(素材の厚さ、剛性、弾性など)を洗い出し、3Dデータに要求される制約をまとめる。 紙やスチレンボード、3Dプリンタによる樹脂を用いた形状構築を行い、その評価を行う。
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