研究概要 |
本年は異常補正・状況認識・確率計算を支援する高性能なセンサ情報処理基盤を実現すべく,研究活動を行った.関係データ処理を基本としながら,それに高機能な演算を導入する枠組みを開発した.具体的には,異常補正を支援するために来歴管理機構を導入し,状況認識を支援するためにベイジアンネットワークを導入し,確率計算を支援するために確率的データベース機能を導入した.来歴管理機能については,ストリーム処理の枠組みにおいて求められる高速性を実現すべく,効率的な永続化技法を提案し,プロトタイプシステムにおいてその有効性を示した.ベイジアンネットワークについては,処理をストリーム処理における関係演算とするために,イベント生起時間とイベント状態という2つの概念を新たに提案した.これにより,結合・集約演算と同様に,状態付演算子としてベイジアンネットワークをモデル化することに成功した.確率計算については,関係データベースの各タプルに確率値を第一クラス属性として与え,各タプルが表す事象を確率的に表現することで,ベイジアンネットワークに対する問合せ結果が有する確率値を自然に表現することを可能にした.さらに,データベース処理の高性能化を図るために,CPUのL1キャッシュミス率を削減するオペレータ処理技法を提案し,それをオープンソースのDBMSであるPostgreSQL上に実装し,提案技法の有効性を示した.以上の成果を2件の雑誌論文,4件の学会発表,そして1件の図書にて発表した.
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