研究概要 |
形状復元問題は,一種の補間問題である.補間問題は古くから考えられている問題であるが,従来は,ユークリッド空間などの多様体空間においてデータが与えられていることがほとんどであった.その一方で,道路ネットワークなどの非多様体空間上にデータが与えられている場合の補間法については研究がほとんど行われてこなかった.2009年度は,このようなデータに対する補間法として,ネットワークスプライン補間法を考案し,その有効性を検証した.ネットワークスプライン補間法は,従来からあるスプライン補間法をネットワーク空間へと拡張した補間法である.拡張の際に問題となるのは,分岐点(例えば道路ネットワークにおける交差点)において,関数がk回連続微分可能であるとはどういうことかが明確でないことである.本研究では,電気回路網におけるKirchhoffの法則からヒントを得ることにより,関数がk回連続微分可能であることのネットワーク空間における定義を与えた.この定義によれば,kが偶数か奇数かによって,連続微分可能性の扱いが異なる.kが偶数のとき,連続微分可能性は従来の定義をそのままネットワーク空間に拡張すればよい.一方kが奇数のときは,分岐点における微分係数の総和が0である,という条件が連続微分可能性の定義になる.このように,従来の常識がネットワーク空間では通用しないことがわかったことが,本研究の重要な貢献の一つである.また本研究では,従来法である逆距離加重平均法にはある種のバイアスがかかっているが,ネットワークスプライン補間法にはこのようなバイアスがかからないことを指摘することにより,本手法の優位性を示した.
|