研究概要 |
本研究は、生体情報として発話を入力とする、大人・子ども自動識別サービスを、ICT(情報通信技術)の技術基盤であるウェブ上に整備することが目的である。その実現に向け,大人・子ども話者自動識別アルゴリズムについて重点的に検討を進めた.本年度は,実用レベルの識別性能を得ることを目指し,アルゴリズムの改良を行った.昨年度までに作成したプロトタイプでは,一般的な音声認識システムと同様に,HMM(隠れマルコフモデル)ベースの識別手法を採用していた.しかし,音声ウェブシステムによる実環境発話を用いた評価実験によって,境界年齢の上昇に伴い,識別性能の低下が生じることを確認した.音声認識を転用したこれまでのアルゴリズムでは,音響的特徴を尤度比較に基づき単純に扱うため,変声期の10代若者の発話を正しく判別することは困難である.また,変声期の音声は,人間の耳でも判断が難しい.この問題に対し,HMMとSVM(サポートベクタマシン)を2層に組み合わせた新たな識別手法を考案し,評価した.直近の成果としては,提案した2層アルゴリズムに,尤度を基準とした素性選択を導入することによって,大人の判別性能を維持したまま,10代以降の子ども判別の精度改善(17歳を大人・子ども境界とする場合で正解率75.2%)を得ることに成功した.しかし,境界をさらに引き上げ,19歳に設定すると,正解率は69.9%に留まる.今後は,実用的に動作する境界年齢をさらに引き上げるように,新たな識別特徴量の導入を検討し,提案手法の実用化を目指す.
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