本研究は、個人が管理するデジタルコンテンツを効果的に活用可能な環境を構築するために、コンテンツに含まれる意味的な関連性に基づいて暗黙的なリンクを想定し、コンテンツ管理に応用する手法を開発することを目標としている。2年目である平成21年度は、対象とするデジタルコンテンツの種類を限定し、デジタルコンテンツの特性に生かしたコンテンツ管理手法の開発を行った。具体的には、個人が撮影したデジタル写真をデジタルフォトフレームに於いてスライドショーとして表示することを想定した環境における管理手法の開発を行った。我々が開発した手法では、タグ付けされた写真を想定し、インターネット上のWebページにおけるタグの共起に基づいて、デジタル写真間の意味的な関連性を推定する。そして、対象とする写真をノードと、意味的な関連の強さによってラベル付けされたエッジからネットワークを構成する。そして、構成されたネットワークから隣接するノードの重みが大きくなるような経路を発見する。この経路が、スライドショーを構成するデジタル写真とその順番を表現する。本手法に基づくプロトタイプシステムを実装し、被験者実験を行った。比較対象として、ランダムに構成したスライドショー、及び撮影時間順に構成されたスライドショーを用い、提案手法によって構成されたスライドショートが与える印象を調査したところ、提案手法は他の2手法よりも、ユーザにとって自然な印象を与えるスライドショーが構成可能であることが統計的に示された。また、携帯電話等の携帯機器における個人コンテンツ閲覧を効率的に実行するインタフェースに関する研究も行った。これは、近年、個人コンテンツの利用環境として携帯端末が重要な役割を有しており、得られたコンテンツの意味的な関係に基づいて携帯端末に適した利用方法の開発が重要であると考えられるからである。
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