研究概要 |
本研究では, 図形商標を用いて, 人間の主観に準じたCBIR(Content-Based Image Retrieval)の性能向上を研究目的として, 図形内に存在する群化領域の認識手法について検討した. 今年度の研究実施計画に従い, まず, 本研究で提案した群化領域の認識手法に再現性があるか被験者と対象図形をさまざまに代えて検証した. 本手法では判別分析を用いて2領域が群化するか否かの判別を行うが, 図形内の構成要素の数が少ない図形をサンプルとして判別式を作成するほど人間の知覚に近い群化パターンを作成できることがわかった. 次に, ゲシュタルト心理学における群化要因「平行性」に対するモデルを作成した. 構成要素2領域に対し, 角度差, 線状性, 距離, 形状類似性の4要素をそれぞれモデル化し, これらを組み合わせて平行性特徴量を定義した. 22個の抽象図形に対し実験を行い, 13名の被験者から得た図形の平行性に関するアンケート結果と比較した. この結果, 角度差と距離については平行性を表す特徴量として有効であることが示唆され, 線状性と形状類似性については提案したモデルに課題を残した. 以上の研究内容と並行し, 「大域的群化」「平行性」「連続性」の要因を取り入れて, 胃X線2重造影像を対象とした胃がん診断支援システムのプロトタイプを作成し群化領域認識の医用画像処理への適用可能性を調査した. 胃X線2重造影像に出現する胃襞の平行パターンや集中パターンは健常・異常を診断する際のキーとなる. 100枚の胃X線像を用いて提案システムの有効性を検証し, 群化領域の認識は医用画像へ十分適用可能であることを確認した. さらに, 肺X線像内で大域的に粒状影が出現するじん肺症の診断支援システムのプロトタイプも作成した. これら画像診断支援システムの構築と群化認識の適用可能性検証は, 次年度の研究実施計画の一部である.
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