研究概要 |
平成20年度の研究実績は,擬人的媒体に載せるモダリティのうちの音声表現に関する検討,および,予備実験における取得データの分析を行った.自然な表現を実体型擬人的媒体において実現するためには音声などの表現の連続性に関する知覚的検討が必要である.発表文献は,知覚的検討の過去の結果からさらに連続性を自然にするための「表情付与」に関する非線形性を検証したものである.この結果は音声においてのみ有効というよりは,何らかの時間的連続性を持つ表現における連続的な表現の表出手法に適用できるものであると考えられる. また,マルチモーダルデータ取得の予備実験を一部行ったものの,繰り越し事項に述べたとおり,マルチモーダル表現をジェスチャとともに取得する環境(VICONルーム)の使用において,所属組織内での調整がむずかしくなったため,別の取得方法として,センサによる体の動きや加速度を取得する手法を考案し予備検討を行った.この手法では,個人性を表す微妙な変化や差分を十分に表現しうるものではないことが考えられた.(この検討に関しては平成21年度の検討に持ち越し,予算を繰り越した) この問題点を解決する前に次年度の予定であった擬人的媒体の構成・構築や,擬人的媒体と人間のインタラクションにおける実際的なコミュニケーションのあり方について,個人化の前の土台として実験を行い,文脈適応を含めた基礎的なインタラクションの妥当性を検証した.これは,個人性表現を搭載した擬人的媒体における表現の検証だけではなく,中長期的利用における個人性評価に影響する重要な知見を得たと考えられる.
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