研究概要 |
平成21年度の研究実績は,まず平成20年度に繰り越した個人化マルチモーダル表現のための,年代別・性別別の日常挨拶マルチモーダルデータの取得を行った.この際,平成20年度に問題となったマルチモーダルデータ取得環境を新たに構築し,新規追加データ等が取得しやすい環境を準備した.この実験では合計36名の参加者により,「シニア層」「中間層」「若年層」の3種類の年代で,男女が各5名以上集まるようにしている.日常挨拶のマルチモーダルデータ同時取得実験とともに,別途音声のみの日常挨拶(平坦表現)を取得することで表現の幅を広げようと考えた.その結果,スポーツなどの趣味がある方々に共通する特徴として,声の抑揚のみにより表現を行う,ということが見られた一方,女性の半数程度はしぐさで声の表情不足をカバーするといった表現特徴がみられた.日常挨拶の想定相手を変化させ,相手に応じて抑揚が増減することもわかってきている.現在この分析は続行中であり,H22年度成果へつなげる予定である. また平成21年度の純粋研究実績として,平成20年度のうちに行ってきている擬人的媒体と人間のインタラクションにおける実際的なコミュニケーションのあり方について,個人化の前の土台としての研究成果を発表した.これは,家族のような個性を表現するロボットと日常を共にすることを前提とし,そのロボットの表現やインタラクションがユーザにとって煩わしいものとならないよう,ユーザの音声や顔向き(視線)に応じて,ユーザの話しかけている相手を判定し,明示的にロボットに話しかけている時に要件などを伝え,それ以外の時に用件がある場合は,「話しかけ意図行動」を示し,ユーザに徐々に気付かせるという,気遣いを見せることが重要という結果をまとめたものである.この表現手法は,時に無遠慮であることが個人性表現に役立つ可能性が示唆されたという意味でも重要な知見である.
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