研究概要 |
調理開始時点では、各食材に「玉葱」や「人参」などの名前が与えられているが、一旦切られたり、ほかの食材と混ぜられた後は、その中間物は「先ほど切ったもの」や「玉葱と人参の混ざったもの」、「カレーの材料」のように、さまざまな呼び方で呼ばれる。本研究では、このように一時的にしか存在しないため固有の名前を持たない中間物を、人間がどのように呼ぶかをモデル化して、人間に分かりやすい名前で呼ぶ、あるいは、人間が呼んだ名前からどの食材のことを指しているかを特定することを目的とする。 昨年度までの成果により、今指示しようとしている中間物は、1)「過去のどの物体と同一か?また未来はどの物体になると推定されるか?」といった、過去・未来の情報(時間的コンテキスト)と、2)現時点における物体の色や形などの情報(空間的コンテキスト)の2つの視点からモデル化すれば、人間が与えたのとほぼ同様の名付けを行うことができることをアンケート分析により確かめた。 そこで今年度は、以下の2点を行った。 ● 時間的コンテキストと空間的コンテキストの両方を関連付けた。これにより、調理で扱うすべての食材(中間物を含む)に関する、調理の開始から終了に至るまでの、名付けに必要なすべての情報をモデル化した。 ● モデルの妥当性を検証するため、モデルに基づき与えた呼称で人間が対象食材を同定できるかを調べた。その結果、調理中に現れたすべての食材のうち93%の食材について正しく同定できたことを示した。 さらに、電子情報通信学会 第三種研究会「料理メディア研究会」の活動を通じて、料理映像コミュニケーション基盤ソフトウェアIwaCamのシステムデザインを行った。このソフトウェアに組み込む画像認識モジュールについて、電子情報通信学会誌Vol.93,No.1「小特集生活に役立つメディア処理-料理行動を科学する-3.料理を作る」の中で報告した。
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