研究概要 |
本研究は,変量間の共変化関係を反映した多変量時系列の情報粒度表現に関する基礎理論の構築とその応用による自動分類法の開発を目指すものである。本年度は,昨年度に考案した曲率極大点位置に基づく時系列の区分法について更なる検討と実装の洗練化を進めると共に,部分系列間の相違度表現として方向ベクトルと重心位置の推移ベクトルをパラメータとする手法を考案しこれを実装した。また,年度後半には実際の医療データ(慢性ウイルス性肝炎検査データセット;ALB(アルブミン)-ChE(コリンエステラーゼ)-PLT(血小板数)の3次元データ)を対象とした比較分類実験を行った。その結果,類似した推移傾向を呈する症例のクラスタが構成され,複雑な実データにおいても同クラスタに分類された例では類似した推移部分の対応が適切にとられていることを確認できたほか,血小板が他より先行して低下した状態となるパターンと他と連動して低下していくパターンが存在していること,クラスタ間において肝線維化度の分布に特徴的な差異が見られることなど,興味深い知見を獲得することができた。以上の成果を,Lecture notes in computer science及びRSFDGrC 2009にて発表した。
|