研究概要 |
平成20年度に整備されたデータベース及びプログラムをもとに、ナノテクノロジーと既存分野で蓄積された知識の関係の構造化・可視化を試みた。具体的には1978~2008年に欧州特許庁に出願されたナノテクノロジー特許(約13,000件)を出発点とし、それらと前方および後方引用によって結びつけられた(第2世代まで)特許出願(約14,000件)を抽出した。次に、これら約27,000件の引用関係の情報を用いてナノテクノロジーと既存分野の特許出願の関係を示すマップを作成し、知識の構造化・可視化を試みた。 この結果、(1)ナノテクノロジー特許出願以外の特許出願を分析対象に入れても、ナノテクンロジー特許が構成する個々の技術群(計測・製造、ナノ材料、オプトエレクトロニクス、エレクトロニクス、ナノバイオ)の関係性は弱く、これらの技術群はほぼ独立に進展していること、(2)ナノテクノロジー特許における知識の多様性はナノバイオなどの個々の技術群内において実現されていること、(3)ナノテクノロジー特許出願とそれ以外の関運性は技術群によって異なり、技術群におけるナノテクノロジー特許の割合、ナノテクノロジー特許とそれ以外の出願年におけるギャップなどが、技術群を分類するのに良い指標であることが確認された。(3)で提案された指標を用いることで、既存分野がナノ領域に入った場合、ナノテクノロジーが既存分野で活用された場合、既存分野がナノテクノロジーの進展に大きなインパクトをもたらしている場合などにナノテクノロジーと既存分野における知識の流れが類型化されることが明らかになった。
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