研究概要 |
セキュリティやマーケティング,HCIなどの分野において,人物の注目方向の計測技術は重要な役割を果たす.これまでの映像からの視線や顔向きなどの計測は,比較的高解像度で撮影した映像を詳細に分析して得るものがほとんどであった.しかし,監視カメラなどの据え置き型カメラやロボットに搭載されたカメラによる広範囲の撮影では人物頭部が低解像度で観察されるなどの課題がある.そこで,本研究では,比較的低解像度で観察される人物頭部の向きを計測する技術を開発し,サービスロボットなどに適用した. 初年度に開発した,複数識別器の出力を手がかりとした,低解像度画像から高精度に人物頭部の向きを計測する手法をさらに発展させ,今年度は低解像度ではあるが,より広範囲を観察可能な全方位カメラを用い,これに加えてレーザ測域センサを相補的に組み合せることで,全方位カメラからの映像をパノラマ展開した低解像度画像から2~3m離れた人物の追跡と頭部向きの計測を可能とした.また,低解像度画像からの顔向きの検出だけではなく,レーザ測域センサを統合することで身体の向きも計測可能とした. そして,この技術を,ミュージアムで作品の解説をするガイドロボットや,介護者と併走する車椅子ロボットに適用した.ガイドロボットでは,観客が今作品を見ているのか,ロボットを見ているのかを頭部の向きに基づいて判別し,適切な説明行動を可能とした.特に,質問時に顔をそむけた観客には質問しないなど,これまでヒューマンロボットインタラクションの分野でも試みられてない課題についても取組み,成果を挙げることができた.また,介護者と併走する車椅子ロボットでは,介護者の位置を頑健に追跡することで,安定して併走する車椅子ロボットを実現した.特に,介護者が進みたい方向を身体の向きや顔の向きから推定することで,従来は困難であった併進時の車椅子側への進路変更を可能とした.
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