本年度は、非線形標本化理論の具体例であるインターレース標本値からの信号再構成に関する研究を行った。一般に信号は、高密度の標本化を行えば行うほど、標本化に伴う情報損失を低減でき、より精密な信号再構成が可能になる。しかし、物理的、あるいは経済的な理由から、高密度標本化が常に可能とは限らない。このような場合に、低密度の標本化を、位置ずれを伴いながら繰り返し行うことで、高密度標本化と同じ効果を得ることができる。これをインターレース標本化と呼ぶ。ただし、位置ずれ量は未知であることが多く、その結果、本問題は非線形となる。例えば、低解像度カメラで手ブレを伴いながら複数の画像を撮影し、それらから高解像度画像を生成する超解像処理が典型例であり、複数のエンコーダーを用いて音信号をサンプルする場合も本問題に該当する。この問題を解決するにあたり、本研究では2種類の前提知識をそれぞれ独立に用いた解決手法を開発した。第1の前提知識は観測対象信号の事前分布であり、第2は観測対象信号のスパース性である。前者を用いた場合には、事後確率最大化(MAP)法に基づくアルゴリズムを開発した。後者については、類似の先行研究であるCompressed Sensingで用いられている11ノルム最小化原理を応用したアルゴリズムを開発した。コンピューターシミュレーションの結果、それぞれの手法の有効性を確認した。これらの研究成果は、国際会議における発表論文に結実している。
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