研究概要 |
情報センシング技術の高度化や計算機の性能向上を背景として, 多次元配列構造をもつデータの情報処理への要求が高まっている. 多次元配列はベクトルや行列を一般化したものであり, テンソルと呼ばれる. 本研究では, テンソルのクロネッカー積表現に基づいて, テンソルデータの類似検索やパターン認識などのテンソルデータ処理を行う方法を開発することを目的として, 平成20年度から平成22年度までの3年間にわたり, 新手法の開発, 検証等に取り組んでいる. 以下に, 本年度の研究実績の概要を述べる. 本年度は, テンソルのクロネッカー積近似と最良ランク1近似の関係を示し, 複数のテンソルデータの同時低ランク近似と主成分分析の関係を示した. また, 行列の特異値分解をテンソルに拡張した高階特異値分解において, 主要な特異ベクトルを自動的に選択して, 各モードの次元数を自動的に決定する方法を提案し, 実験でその有効性を確認した. 更に, 複数のテンソルデータの同時低ランク近似をロバスト化したロバスト同時低ランク近似を提案し, 顔画像データベースを用いた実験で, 外れデータの影響を受けることなく, 顔画像データの圧縮・復元ができることを確認した. また, テンソルデータ集合を部分空間で表し, 部分空間をマッチングすることによって, テンソルデータを識別するパターン認識法を提案し, ロバスト化を行うことによって, 外れデータを含むテストデータの認識率が向上することを確認した.
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