研究概要 |
本研究では, 表情の長期的な時間変化に対する "表情特徴空間の適応学習メカニズム" を明らかにする. 研究代表者は前回の科研費課題(若手(B), 課題番号18700192, H18-19)において, 顔表情による感情推定への適用を目的とした "個人固有の表情特徴空間" の生成手法を確立し, 表情から認知される感情の程度を特徴空間上に表現することを可能とした. 一方, 人間の表情は多様であることから, 被験者の表出し得る全ての表情パターンを学習データとして一度に獲得することは困難と考えられる. また, 加齢等による顔の構造の経時変化に伴い表情パターンも変化する. したがって, 顔表情を対象としたマンマシンインタフェースの高度化を目指すためには, 長期的な時間軸に対して高い頑強性を有する特徴空間を生成することが重要と考えた. そこで本研究では, 追加学習機能を組み込んだ表情特徴空間の動的更新手法について検討を加え, 時間経過とともに表情特徴空間を修正する適応的な学習メカニズムの確立を目指した. 平成20度は前回の科研費課題の成果である表情特徴空間を初期の認識モデルとし, 「ART(適応共鳴理論)を用いた追加学習(新規表情カテゴリの生成)」及び「CPN(対向伝播ネットワーク)を用いた表情特徴空間の再学習(表情カテゴリの整理・特徴空間の再構築)」を組み込んだ適応的な学習メカニズムを提案した. 基礎実験として, 喜びや驚きなどのバリエーションが豊富, かつ被験者が表出しやすい表情を対象として表情認識を行ったところ, 長期的な時間軸に対して表情特徴空間で表現及び認識可能な表情パターンの増加が認められ, 適応的学習を目的とした提案手法の有効性が示された.
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