本研究では、紙や文書の質感と密接な関係にある偏角分光反射特性を、フラットベッドスキャナ型の画像入力装置で測定することを想定し、直線照明光源、分光カメラ及び複眼光学系を用い、光沢度の異なるさまざまな紙に対して露光条件を空間的に適応的に設定することにより、高ダイナミックレンジな画像を撮影する方法について研究する。本年度は、画像入力システムに配置する直線照明光源、分光カメラ及び複眼光学系の配置を決定するため、測定ジオメトリの最適化を行った。その方法として、8種類の印刷用紙及び和紙の284ジオメトリでの偏角放射輝度率から少数ジオメトリのデータを抽出してBRDFモデルパラメータを推定し、ジオメトリの抽出と推定精度との関係を調査した。BRDFモデルには、先行研究で紙の偏角反射モデルとして有効性が確認されたTorrance-SparrowモデルとLambertモデルの線形結合によるモデルを用いた。その結果、表面が粗く、光沢の少ない紙(普通コピー紙、マット紙、和紙)では、12ジオメトリでのデータから284ジオメトリの場合と同等の精度が得られた。光沢の高い紙では、鏡面反射ピークの形状を適切に取得する必要があり、少なくともその半値全幅以下のサンプリング間隔が必要であることが分かった。しかしながら、密なサンプリング領域を鏡面反射方向近傍に限定しても推定精度が変わらないため、測定点数を大幅に減少できることが分かった。次年度以降は、以上の知見に基づいて、照明、光学系及びカメラを配置し、装置を構築して文書類の計測実験を行う。
|