本研究では、画像情報コンテンツとしての重要性が増している紙や文書類について、その色や質感を忠実にデジタルアーカイブできる画像センシング技術の開発を目標とする。紙や文書の質感と密接な関係にある偏角分光反射特性を、フラットベッドスキャナ型の画像入力装置で測定することを想定し、直線照明光源、分光カメラ及び複眼光学系を用い、光沢の度合いが異なる部位が混在した文書に対して、露出条件を空間的に適応的に設定することにより、高ダイナミックレンジな偏角反射画像を取得する方法について研究を進めている。本年度は、正反射方向近傍に設置した複眼光学系を用いて、高ダイナミックレンジ画像を取得する方法について検討した。ポイントとなるアイデアは、正反射近傍の偏角画像群を、露光量の異なる画像群として取り扱うことである。高光沢物体は、正反射方向できわめて強い鏡面反射光を生じ、その偏角反射特性は、ほぼガウス型のプロファイルとして記述することができる。そこで、このプロファイルから、正反射方向からの角度と露光量との換算式を求めた。その換算式により、正反射方向近傍のジオメトリでの放射輝度率から正反射方向の放射輝度率を推定した。次年度は、今年度までに得られた知見に基づいて、直線照明光源、分光カメラ及び複眼光学系を組み合わせた高ダイナミックレンジ偏角分光画像撮影装置のプロトタイプを構築し、分光画像と正反射近傍の複眼画像群から高ダイナミックレンジ偏角分光画像を生成する。
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